9-9. 植物細胞:TiプラスミドDNAに基づく方法
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植物細胞は運動性に乏しく、硬い細胞壁をもつためにDNAを導入しにくく、工夫が必要
植物細胞へのDNA導入法には、通常電気穿孔法かTiプラスミドが使われる
後者の場合、実際にはヘルパーTiプラスミド(T-DNAを欠くが、感染や組込みに必要なタンパク質をコードするvir領域をもつ)を保有するアグロバクテリウムに目的DNAを組込んだTiプラスミドを導入する
次に、細菌を植物細胞に接種し、細菌がもつ目的遺伝子を含むT-DNA部分をゲノムに移す
vir領域から供給される酵素がT-DNA両端のボーダー配列に作用し、DNA断片がゲノムに組込まれる
このように他のベクターと対となって完全な機能を発揮するベクターをバイナリーベクターという
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Column 遺伝子工学の黎明期:日本では
最初のDNA組換え実験は1972年、アメリカ
すでにDNA pol、TdT、DNAリガーゼなどは利用できるようになっていたが、バーグらは線状化したSV40ウイルスDNAとλ dv galプラスミドの両者を、ホモポリマー法で接着させ、上記酵素で2種類のDNAを1つの分子にするという、試験管内組換え反応に初めて成功した
翌1973年、コーエンとボイヤーらは当時使われ始めた制限酵素を用いてプラスミドを特定の場所で切断し、そこに特定遺伝子を含むDNA断片を組込ませ、組換えDNAが実際に大腸菌内で機能することを示した
遺伝子工学ではいかに自由に酵素が使えるかがポイントだが、1970年代半ば、日本はまだまだそのような状況にはなかった
そこで、当時九州大学の高木康敬博士が中心となり、文部省の肝いりで酵素供給を目的とした研究班がつくられた
各班員は特異とする酵素を大量に精製し、それを必要とする研究者に頒布した
酵素は1979年から宝酒造(現タカラバイオ)によって製造・発売されるようになり、まだまだ手工業的な体制ではあったが、これがきっかけとなって日本の遺伝子工学が一気に動き出したといっても過言ではない